観光隊員って何をするの?
青年海外協力隊で赴任するという話をした時、よく聞かれたことは、「赴任先は自分で選べたの?」「観光隊員って、どういう仕事をするの?」という質問です。なので、今日はそのことについて書きたいと思います。
応募について
募集案件はこのサイトから一覧リストを見ることができます。ちなみに応募の時点では、1)配属先の詳細と要請内容、2)必要な実務経験、3)活動使用言語と生活使用言語(共通語と現地語など異なる場合がある)、4)使用できる機材や設備の詳細、5)水道や電気などは整備されているかの有無、などが記載されています。
そのため、自分の行きたい国に行けるわけではなく、自分に合った要請が出ている地域に絞って応募し、その要請内容や応募者の適正に基づいて、最終的にJICAが判断するというのが主なプロセスになります。この「適正」についてですが、面接官は応募者のストレスマネージメントも重視しているため、例えば、応募者の趣味が「ジョギング」であるのに任地が徒歩移動禁止エリアの場合(あまり多くはないようですが)、JICAは別の任地の方が適していると判断することもあるのです。
赴任前の要請内容について
要請内容がJICAに渡ってから私が赴任するまで、約2年。赴任した時には、要請を出した観光局のディレクターはもうすでに退任していたため、ゼロからの出発でした。赴任前の要請内容は、体験型アクティビティのルート開発やプロモーション強化、エコツーリズムにも興味があるとのことでした。具体的な内容は、以下の3つです。
- 州内にある観光資源の発掘調査(現状:行っている)
- 観光カレンダーや観光マップの作成協力(現状:調査の結果、行わない予定)
- 体験型観光ルート開発への協力(現状:行っている)
大切なこと
協力隊では、要請内容通りにやることよりも、現地の本質的な問題や予算状況、協力者の有無、民間企業との連携、スタッフのやる気(実はこれが一番大切)などの現状を見極めて、それを解決または改善するために何をすればいいのか、そして何ができるのかを一緒に考えていくことが求められています。現地では、何度も「何をしに来たの?」と聞かれましたが、私はそれを探すために来たのです。
次は実際にやったことについて、もう少し詳しく書いていきます。
ステップ1. 言語の上達・人間関係の構築や組織の把握(赴任後1~2ヶ月目)
言語習得は時間もかかる上に忍耐も必要。とても孤独な作業です。日本では私語をせず、ひたすら作業をすることが良しとされていますが、こちらでは「コミュニケーションを遮断している怪しい人」として見られることがあるため、とにかく最初は居心地悪く感じても、積極的にコミュニケーションを取るよう過ごしていました。また、頻繁に「何をしにきたのか」と質問されたものの、会話の中では思うように伝えることが難しかったので、今後の活動プラン(下図)をWordにまとめ、配属先に配りました。(これで一通りの質問攻撃は落ち着いた)
この頃の仕事内容としては、どんな資料があるのか、データはどこに収容しているのか、オフィスでは誰がどんな役割を担当しているのか、観光名所はいくつあるのか、観光客数はどのように調べているのか、マップはどこに何種類置いてあるのか、各機関の役割など。とにかく調べられるところから情報を集め、自分なりに収集データをまとめていきました。なにせ言語の問題があるので、どの作業も時間がかかるのです。
ステップ2. 現場の調査・ニーズ把握/ノウハウ集め(2~3ヶ月目)
ある程度、配属先の組織や観光名所について把握してきた頃から、現場調査に入りました。最初は、当時環境隊員としてお世話になっていた先輩隊員のサポートもあり、市役所とリサイクルセンターの訪問、市役所観光課の担当者へのヒアリングをしました。その後は主要バスターミナル、市内の観光名所、醸造業界の担当者とコネクションを築くなど、少しずつ視察場所を広げていきました。なにより、これまでの会社勤務とは異なり、手探りの中から全てを立ち上げるということが初めてだったので、先輩隊員らの活動記録が掲載されているJICA発行の誌面「クロスロード」を片っ端から読みながら、ノウハウを集めて参考にしました。
それらをもとに、自分には何ができるのか、何をすれば状況を改善できるのか、根本的な原因は何なのかを、前職でもお世話になったSWOT分析を取り入れながら、リストアップしていきました。
ステップ3. 状況に応じたプロジェクトの提案準備(6ヶ月目以降)
度重なる人事異動により、なかなか配属先での活動が難しかったため、2~3ヶ月目に出会った醸造業界の担当者A氏と提携してプロジェクトを立ち上げることにしました。またこの時そのA氏に、4ヶ月目以降から活動場所を広げることを提案されたため(といっても、とても軽いノリだった)、今は週に3回イカ州政府通商観光局(分野:観光)、週に1回イカ商工会議所(分野:商業)、週に1回生産省管轄の農業加工・技術革新センター(分野:農業・商業/以下CITE)という具合で働いています。
技術革新センターでは、ワインや地酒ピスコの研究が行われているため、全体の活動は1)ピスコを用いた商業および観光プロモーションの促進(分野:観光・商業)にフォーカスしていくことにしました。加えて、2)異文化理解を深めるための日本文化紹介(分野:JICA事業の目的)や、3)エコツーリズムに関する活動(分野:観光)も大切だと思っているので、それに関するイベントや自分に出来ることなどがあれば、積極的に参加したいと思っています。方向性が定まってからは、共同プロジェクトのアイデアを思いつく限り出しながら、一般企業や一般社団法人など、協力者を求めてコンタクトを取り続けました。
ここまで文字にすると淡々としていますが、スムーズに行かなかったことは沢山ありました。現に、今活動の中心となっているA氏も、来年3月でいなくなってしまうとのこと。というわけで、ようやく活動が動いてきたと思ったら、また振り出しです。でも、それもある意味想定内(笑)とりあえず、複数のオプションを作っておいてよかったです・・・。
現在の仕事内容(赴任6か月以降~)
基本的に普段の仕事内容は、提案したプロジェクトのコーディネートや、観光ブログの執筆、観光局に来た観光客(外国人観光客含む)の観光案内、コラボレーターの新規開拓、プロジェクト用のプレゼン資料作成、観光業界の動向を把握するためのデータ調査、JICA関係の提出資料の作成、観光関係のイベントへの出席、ピスコに関する記事やデータの収集、活動日誌の作成(といっても個人用の簡単なもの)、月刊報告書の作成(職場用)などをしています。赴任して9ヶ月目ですが、まだ分からないことは沢山あるので、情報収集には比較的時間を費やしています。
このような感じで、日々一歩進んで二歩下がりながら、活動しています。観光隊員といっても赴任先によって活動内容は全然違ったりするので、あくまで一例としてですが、大体どんな事をしているのか、理解して頂けたら嬉しいです。
青年海外協力隊員になろうと思ったきっかけ
実は、スペイン語を学ぶことと国際協力の分野に携わることは、人生でやりたいことリストのひとつでした。リストの作成から実現まで、約4年。でも4年前は、まさか協力隊員になるとは全く予想していませんでした。
青年海外協力隊員になろうと思ったきっかけ
よく聞かれるのですが、協力隊員になろうと思ったきっかけは、この4つです。
- 学生時代から、 国際協力に興味があった
- 観光隊員としてならば、今までのキャリアを用いて国際協力に携われると思った
- フランスに行った時、スペイン語が好きだと気づいてしまった(あれ?)
- 総合的に考えて、一番自分のやりたい事が集結した事業だった
1. 学生時代から、 国際協力に興味があった
大学生の頃から国際協力には興味がありましたが、具体的にどんな機関があるのか、どんなことをするのかほとんど理解していなかった為、「やってみたいけど、何をすればいいのかよく分からない」というぼんやりした印象でした。
学生時代は絶対にこの仕事に就きたいという気持ちも特に無く、「誰かの人生にインパクトを与えるような仕事をしたい」という漠然とした思いを抱いていたのを覚えています。そんな中、自分の人生に大きなインパクトを与えたのは「旅行」だったので、まずは国内外の観光業界で働き始めました。数年後、今後も観光業界に残るか、他の分野に挑戦するかというキャリアパスについて考えた際、どうしても国際協力に携わりたいという気持ちが自分の中に残っていることに気づいたのです。
2. 観光隊員としてならば、キャリアを用いて国際協力に携われると思った
何らかの形で国際協力に携わりたいと思ったものの、これまでのキャリアを全て捨てて、一から新しい業界に飛び込むのは勇気がいる。どういう決断をしたとしても、後になって自分が本当に満足できるような決断をしたかったからこそ、自分なりに時間をとって考えました。
そんな事を考え始めたある日。帰宅中の山手線で、目の前に青年海外協力隊募集のつり革広告を発見!気になって調べてみたところ、観光分野で隊員を募集していることを知りました。そんなわけでその半年後に応募し、2018年4次隊としての派遣が決まったという経緯です。
3. フランスに行った時、スペイン語が好きだと気づいてしまった
もう一つJICA事業に大きく惹かれた理由。それは、南米でも観光隊員を募集していたということ。というのも、フランスにいた時、スペイン語が好きだと気づいてしまったのです!(あれ?)
正直、フランス語を始めたときは「なんて読みにくい言語なんだ・・・」と思っていましたが、時間と共にフランスにもフランス語にも、愛着が湧いてきました。今でも第二のホームだと勝手に思っているし、国際大会で国歌が流れれば歌うし、ワインやチーズやクロワッサンの美味しさを知った大切な国です。それでもいつかは学んでみたいと思った言語、それがスペイン語でした。スペイン語の持つ響きとか、イントネーションとか、好きなんですよね。(未だにちゃんと巻き舌できないけれど)
4. 総合的に考えて、一番自分のやりたい事が集結した事業だった
というわけで結論としては、私がやりたいと思っていた1)国際協力に携わること、2)観光業界でのキャリアを生かすこと、3)スペイン語を習得すること、という3点が全て含まれていた事業が、青年海外協力隊だったという訳です。実際、私が応募した時は、ベトナムやタンザニアでも観光隊員を募集していましたが、ペルーの要請内容が一番自分のキャリアに合っていたので、そういう意味でもとてもタイミングがよかったとも言えるのかもしれません。
(注:要請国およびプロジェクト内容は、必要に応じて随時更新されます)
今後の進路について
渡航前、今後の進路についてどうするのかと何度も質問されたのですが、あえて私は決めませんでした。むしろ、赴任9ヶ月目の現時点でも決めていません。というのも、二年という月日の中で自分がどれだけ成長するかや、どんな変化があるかもわからないのに、渡航前から自分にリミットを設けることは、それ以上成長できなくなるように感じたからです。今考えても決してラクな選択ではなかったけれど、期待を込めてもう少し自分の伸び白を信じてあげたいところです。(といいつつ、真っ白だったりして)というわけで、二年目に入ったらゆっくりと考え始めてみようと思います。
まとめ
どういうきっかけであれ、自分のやりたいことをやりたい時に決められることや、半ば呆れながらもそれをサポートしてくれる人が周りにいるということ。砂埃にまみれ、食中毒やらピロリ菌やらに手こずりつつも、やりたいことをやり続けられるだけの健やかさがあるということ。これまで幸せとは、選択できる自由があることだと思っていましたが、未だに貧困格差を感じるペルーでは、特にそれを顕著に感じます。なので、今はとにかくこの場所で活動できることに日々感謝して、がむしゃらに進んでいきたいと思います。
ではまた!
圧巻の自然美!パラカス国立自然保護区
お久しぶりです。途中まで書いた未公開の記事が溜まり続けている、ワカチナ娘です。今回は、同期の環境隊員が働いているパラカス国立自然保護区についての紹介です。
実はイカ州でトップクラスの観光地
イカ市内からだと約1時間半~2時間ほどで行けるのですが、2018年観光庁の統計によると、イカ州に来る観光客のうち63.3%の観光客が足を運ぶ場所が、このパラカス国立自然保護区です。ちなみにワカチナのオアシスは、イカ州に来る観光客のうち56.7%が訪れ、ナスカの地上絵には26.5%が訪れると回答しています(複数回答)。
最初この統計を見たとき、ナスカの地上絵が最多じゃないんだ!と少し驚きましたが、恐らくパラカス国立自然保護区は近隣にビーチリゾートがあるので、夏の期間はリマからの国内観光客が多く来たり、空港からも比較的近いので、クスコを周った観光客がアクセスし易いということが理由なのかもしれません。パラカスでは5~8月は外国人観光客が多くなり、祝日や1~4月は国内観光客が多いそうです。
何もないという自然美
さて、「国立自然保護区」と聞くとどんな場所を思い浮かべますか?カナダの国立公園のようなみずみずしい森林?木の間から顔を出す野生の熊や鹿?砂漠地帯のイカにある自然保護区は、一味違います。
ご覧のとおり、木は殆ど生えておらず、見渡す限り砂と石の茶色!!まるで火星に来たかのような光景ですが、むしろここまで何もないことに感激しました(?)。これまで私が抱いていた自然保護の感覚は、「森林を守る」ことや「森に住む動物を保護すること」でしたが、私がイカに来て思ったことは、「何もない」という自然の美しさがあるということ。そしてそれらを保護することの大切さです。(もちろん、厳密に言えば保護区内にも何らかの生物が住んでいるのかもしれませんが)パラカスだけでなく、それはイカの砂漠に対しても同じように感じます。是非一度、訪れて欲しい場所です!
見れば見るほど、まるでス〇ーウォーズの世界。ちなみに同期隊員に話を聞いたところ、保護区内にはキャンプが可能な場所が3ヶ所あるため、キャンプ道具を持参すれば可能だそうです。我こそは!という方は是非、お試しあれ。(ただしキャンプ道具の貸し出しは行っていないようなのでご注意を)周りには何もさえぎるものが無いから、星空はきっとすごく綺麗なんだろうなぁ。
この自然を守るために、保護区の職員やボランティアがほぼ毎日パトロールをし、保護区内の立ち入り禁止区域に観光客が立ち入っていないかや、無断で撮影をしていないかなど見回っているとのこと。ちなみに、車で立ち入り禁止区域に侵入している観光客がいた場合は、注意喚起を行い、彼らが車の線を消してきちんと車道に戻るまで見届けるそう。話によると、ソファなどを持ち込んで撮影をしていた人たちもいたとか・・・パトロール隊のみなさん、大変そうですね。お疲れ様です。車道にはこのように石が線状に置かれていて、どこを走ればいいのか誰でもわかるようになっています。(写真下)
パラカス国立自然保護区への行き方
ツアーで行く場合:保護区内はとても広いので、様々な手間を考えると、ツアーに入るのが無難だと思います。イカ市内にもパラカスまでのツアーの販売は沢山ありますし、保護区に近いパラカスの町やホテル内でもツアーが販売されているので、そこで申し込みをすることができます。ちなみに、近くにあるバジェスタス島とのセットツアーで販売しているところも多いようです。
個人で行く場合:イカ市内~ピスコまでバスで約1時間、ピスコ~パラカスの中心部まで乗り合いタクシーなどで30分、そこからタクシーで保護区内へ。もしくは、本数は少ないですがイカ~パラカスまでのバス(Cruz del Sur社)も出ているので、それを使ってパラカスの中心部まで直接行くことも可能です。
海沿いに停まるボートや、地平線に見える夕陽が本当に綺麗。
是非チェックしてほしいもの
海が近くにあるパラカスに来たら、是非新鮮なセビーチェを堪能してみるのがおススメです!野生動物が沢山いて、ペルーのガラパゴスとも呼ばれている「バジェスタス島」まで足を運ぶのも人気のコースです。
パラカス国立自然保護区
年中無休
入場料:11ソル(1日有効)
入場料込みキャンプ料金:30ソル(3日間有効)
バジェスタス島と保護区のセット入場料金:17ソル(保護区は1日のみ有効+3日間以内にバジェスタス島への訪問が可能)
(2019年12月11日時点)